2002年7月27日

「アルツハイマー病の危険因子と予防方法」

筑波大学臨床医学系精神医学教授
朝田 隆先生




人間の記憶
第1段階 記銘 とりあえず登録する。インプットしておく。
第2段階 保持 これは面白そうだからとりあえず覚えておこう。キープしておく。
第3段階 想起 いつか聞いたあの話、なんだっけ。思い出す。

脳の中の『海馬』という部分は第一段階をする場所です。

皆さんよくご存知のように痴呆症の人はさっき食べたご飯のことは忘れますが、昔のことはよく覚えています。

アルツハイマーでやられてしまうのは、まずこの海馬=インプットの部分です。
インプットしたつもりの記憶が、ザル状態ですぐに抜けてしまう。
それに対して古い記憶は最後まで神経細胞が残っている部分に詰まっているので覚えていられる。
また、体で覚えた記憶=手続き記憶
(キーパンチャーでキーを叩いていた人はアルツハイマーが進んでも叩けるし、自転車に乗っていた人は乗ることが出来る)
も残ります。

これは70歳の女性の普通の脳みそです。だいたいこんなところだろうと思います。
こちらはアルツハイマー病の脳みそです。スカスカになっています。これくらいになると名前を呼ばれても無頓着なくらいになってしまいます。

上の70歳女性のスペクト(血の流れを明るさで表現)です。
赤やピンクの部分にいちばん多く血が流れていて、少し落ちるとオレンジ。
黄、黄緑、緑、青。明るい色であればあるほど、その場所に血がたくさん流れていることを表しています。
アルツハイマー病が進むと、明るい部分が少なくなります。
これは頭の後ろのほうだけが少し明るい。ここは目でものを見る時に映像を焼きつける部分です。
アルツハイマー病がいかに進もうと、この部分は最後まで残ります。

早期発見・早期治療
私がアルツハイマー病を専門に始めて14、15年が経ちます。
つい最近まで、アルツハイマー病は治らない。だから診断や検査をしてもどうしようもないじゃないか、と言われてきました。
ところが昨今はなかなか有望な治療法が出てきています。
なので他の病気と同じように早期発見・早期治療は意味のある言葉になりつつあります。

発病
脳卒中であれば、○月○日に痺れが出て、ろれつが回らなくなって…という風にいつ発病したかがはっきりと分かります。
ところがアルツハイマーはいつの頃からかわすれっぽい、というだけです。
普通は、「身近な人たちが後から振返って、最初に変調、異常に気づいた時」をもって発病とすることになっています。

原因・発症
アルツハイマー病はアミロイドという物質が脳の中に溜まることが原因です。
アミロイドが核となって次第に大きくなると老人斑という構造が出来ます。
それが神経細胞を殺す神経毒性を持っていて、溜まっていくと神経細胞が死んでしまう。
その最初のアミロイドが溜まり始めるのが、本質的な意味では発症です。

問題は、家族がはじめて「おかしい」とおっしゃる時と、アミロイドが溜まり始める時の間が、
少なくとも10年〜十数年かかっているということです。
最初におかしいと言われる10年も前からアミロイドは溜まり始めているということ。
現在アルツハイマー病の研究者の中でいちばんの問題は、
「おかしい」といわれる前にどうしたらアミロイドが溜まり始めていることをキャッチできるのか
とうことです。

期待されている治療法
現在世界的にいちばんよく売れている薬はアリセプトという日本のエーザイが作っているものです。
しかし根底から病気を治すものではなく、進行を遅くするか1年間進行を止める程度の対症療法です。

根底から病気を治すために、今4つほど大きな戦略があります
1. アミロイドワクチン療法
アミロイドに対するワクチンを打ちます。すると脳の中にアミロイドが溜まらなくなります。
3年ほど前から欧米では人間においての実験を始めました。注射でワクチンを打つ方法です。
その結果、フランスでは2ヶ月間で40人もの人が脳炎、脳膜炎になりました。
脳膜炎さえクリアできれば使えるだの、使用方法を変えれば効果があるだのとも言われていますが、
現在人間の治験は中止になっています。
ワクチン療法により動物実験においてはネズミは賢くなります。
アルツハイマー病にしたネズミにワクチンを打ち、迷路にいれます。餌に辿り着くためには
迷路を突破しなければなりません。ここでの試行錯誤の回数を調べることで、効果を測定します。
ワクチンを打ったネズミが賢くなることは2年前に確かめられています。

2. βセクレターゼ、γセクレターゼ
アミロイドはアミロイドプレカーサープロテインという前駆体から一部分がロケットのように切り出されて
出てきます。その切り出しにかかわるのがセクレターゼという酵素です。その酵素の働きを阻害することで
アミロイドを脳の中に出さない方法です。
現在、欧米では人間で治験を行っているようです。今のところ大きな副作用は報告されていません。

3. ネプリライシン
アミロイドが出てくるのは仕方がないとし、出てきたアミロイドを早く新陳代謝させて脳に溜まる前に
体外に排泄物として出すという方法です。

4. 再生医療
いちばん進んでいるのがさいたい血、へその緒の血液の中の幹細胞を利用する方法です。
幹細胞はいろいろな細胞に分化する前のいちばん元の細胞。
うまく用いれば白血病が完治するかもしれないと期待されているものです。

神経細胞は他の細胞と異なり、生まれた時に最大数の細胞があるが年月と共に減っていき、
60歳にもなると生まれた時の半分の細胞しかないために、ものわすれをしたりボケたりする。

というのがつい最近までの定説でした。

ところが3年前に、それが誤りであることがわかりました。
神経幹細胞というものがあり、脳の細胞も死ぬまで新陳代謝していることが分かりました。
ですから、いかにして神経細胞に効率よく新陳代謝してもらい減ることを食い止めるか、ということが言われ始めました。

なかなか恐ろしい方法ですが、自分の脳から一度幹細胞を取り出して、試験管の中で増やし
再度脳へ戻すという方法が、脳外科のレベルでは考案されつつあります。

どの治療法をとっても理屈からいうと、ああ本当かもしれないな、と思うようなことです。
それだけに課題として症状が出る前にいかに早くアルツハイマーになっていることを指摘するかというのが
ポイントとなってきます。

ものわすれの自覚
平成6年に小平市にある国立精神神経センターにわが国初の「ものわすれ外来」ができました。
科学の研究が進んでいる中、いかにして早期の段階でアルツハイマー病を見つけるか。
どのように介入したらいいのか。
それを解明するために特殊な外来を作ったのです。

皆さん方に「ものわすれはありますか?」と聞くと、大概の方は「ありますよ!」と答えられます。
比較的軽度の段階であれば、自分で「おかしい」「もう少しよかったのに」とおっしゃいます。
気分の問題もあります。
ものわすれ外来にいらっしゃる3分の2の方は、アルツハイマー病がなんらかの形で始まっていますが、
あとの3分の1の方は違います。
その中でいちばん多いのはうつ病です。

うつの方は気分がさえなくて、うわの空の状態です。
うわの空だから人が何か言っても右から左へ抜けている。
注意力や意力が落ちると、やはり人は忘れます。
うつは薬を飲めば治ります。

教育年数によっても自覚の差が出てきます。
勉強をしている期間が長いと、いろいろなことを記憶するために語呂あわせなどのテクニックを
たくさん使います。
若いうちは通用しますが、年齢が進むと脳のたくさんの部分を活性化させないと同じことができなくなる。
例えば、動物の名前を思い出してください、という課題を出してMRIで脳の働きをみます。
若い脳は前頭前野の一部分がパチパチッと光ります。
ところが高齢になるにつれて、脳のあちこちが光るのです。明らかに言語の機能以外の部分まで光ります。
アルツハイマー病の人になると、もっと光り方が悪くなります。
つまり非常に効率が悪くなっているということです。
ですから他の人からは立派に見えても、教育年数が長くてその分たくさんのテクニックを使っていた人にとっては
昔のようにはいかないなと感じて、ものわすれを訴えやすくなるということです。

性格傾向も関係します。
心気症という病気があります。
ガンノイローゼに代表されるように、本当は胃ガンでも大腸ガンでもないのに本人だけがそういう病気だと信じて
次々と医者にかかる。どんなに検査をしても納得せずに、ドクターショッピングを繰り返す。
心気症の対象は、今までは胃や心臓でした。
近年、こういう人たちの中にものわすれ外来に来られるような方もおられます。

周囲が気づく初期症状
記憶の第一プロセス、記銘力の障害に気がつく方が多いようです。
典型はこんな感じです。

ある日曜日、ご主人と奥さんが話をしていた。
近々娘さんが結婚するので、披露宴の引出物を何にしようか。
その時電話が鳴り、奥さんは電話に出て2、3分話をして戻ってきた。
「ところであなた。さっきの話だけれど、私こっちがいいと思うんだけれど」
するとご主人が
「おい、何の話をしてるんだ?」
「ふざけないでよ。引出物の話」
「え? 俺、引出物の話なんてしてたっけ?」

文脈の中ではきちんと覚えていられる話が、電話がかかり注意がいったんそれてしまう。
そして「ところでさっき…」と言われた時に、「ところでさっき」の糸がたぐれない、という風な状態が
記銘力の障害です。

時間・場所に関する見当意識
男性の場合、サラリーマンを辞めてしまうと今日が何月何日何曜日なのか関係無くなります。
しかしちょっと間違っても1、2日程度であればよろしい。
それがあれ? と思うようなことを言われたら要注意です。

ボケてしまうと徘徊するというのは有名ですが、最初から自宅の近くで迷うわけでは
ありません。旅先の大きなホテルで部屋がわからなくなり、右往左往しているうちにホテルを出て
迷ってしまった、というような方向感覚のなさがそもそもの始まりであったということもあります。

女性の場合は料理の面で変化が出てきます。
年相応、暮らしの変化相応の料理の変化ではなく、極端な変化は要注意です。

年齢相応のものわすれか初期のアルツハイマー病か

AMI (Age Associated Memory Impairment) 年齢と相関した記憶の障害
生理的範囲、つまり年相応のものわすれを意味します

MCI (Mild Cognitive Impairment) 軽度の認知機能の障害
悪性のものの初期状態。この人たちを4年くらい追跡調査していくと半分の人がアルツハイマー病へ進行 していきます。

いくつかの治療法がある中で、精神神経学会ほか4つの学会で治療法のオススメ度をABCにランク付けしました。
A そこそこ期待できます
B ちょっと眉唾
C これはダメでしょう
ですからAでなければいけません。

A ドネペジルという薬(日本ではエーザイのアリセプト。海外では類似品としてガランパミン、リバスチグミン)
B ビタミンE アメリカでは効くということになっています。アルツハイマー病の人が飲むと、2年くらいの間の進行が遅くなると言われています。
  イチョウ葉エキス これもアメリカの研究では、多少とも効果があるということです。

食べ物についても言われていますが、いずれもAランクではありません。
ビタミンCやβカロチン(ニンジン)、ビタミンB、ヨウ酸、ミネラルはBランクくらいだと思います。

コレステロール値を下げる薬を飲んでいる人はアルツハイマー病になりにくいという話があります。
ヨーロッパでメバロチンを飲んでいる人たちの追跡調査の過程で、計算上で考えられるアルツハイマー病の発症より
実際の発症が少なかったことから、コレステロール値を下げる薬は、ひょっとしたらアルツハイマーの予防にも
使えるのではないか、と期待が集まりつつあります。

脳卒中を予防するためには、
血圧を下げること
塩辛いものを食べないこと
急に温度差のあるところ(暑いところから寒いところ)へ出ないこと
これらは常識となり、日本の死亡原因のうち、脳卒中は昭和20年以降ずっと減ってきました。
これは危険因子がわかっていて、危険因子をやっつければそのまま予防になる。

それと同じ手を使おうという発想はあるわけです。
アルツハイマー病の危険因子を知り、そのような生活を避けるということ。
しかしアルツハイマー病は注目され始めてから20年程度しか経っていず、なかなか行き渡っていないうえ、
根拠のない「いいこと」(手先を使う、俳句がいい、緑茶を飲むといいetc)が横行しています。

医師が注目する危険因子
  
家族歴 血縁者にアルツハイマー病歴があると、発症率が約3倍になります
家族歴ダウン症やパーキンソン病の家族歴があるとなりやすいというのは、根拠が無いと思われます。
高齢出産高齢出産で生まれた人はなりやすい、というのは日本人数千名で検証しましたがあてはまりませんでした。
教育年数  どれだけ勉強したか、知的なことに関心を持ってどれだけ頭を使うかということ
 勉強することによって神経細胞は増えませんが、シナプスの数は増えます
 シナプスとは、隣り合った神経細胞同士がネットワークを組むために持っているタコの足のような部分です。
 シナプスが多ければ神経のネットワークの状態はよく、頭の働きはいいはずです。
 ですから生涯、自分の興味のあることについて頭を使うことによりシナプスを増やしていれば、
 アルツハイマー病になりにくいということです。
タバコ  肺ガンにも胃ガンにも食道ガンにもいけませんが、アルツハイマー病に関してはよさそうです。
 ただし、アポE-4という、放っておくとアルツハイマーになる危険性の高い遺伝子を持っている人たちにとって、  喫煙は予防になるのではないかということです。
 危険度の高い人がタバコを吸うと、確かに発症率が落ちます。
飲酒   赤ワインは心筋梗塞の予防になります。アルツハイマー病にもいいという説がフランスから出ましたが   肯定も否定もされていません。
  私たちもビールや日本酒など、いろいろやってみましたがこれといった結果は出ていません。
  最近ヨーロッパ連合から出た調査では、少なくとも脳血管性痴ほう(小さな脳梗塞がたくさんできることによってボケていく)
  にとっては、1合ちょっとの酒を飲んでいることは予防になるとのことです。
  飲みすぎは血管が切れてしまいます。1合というのがポイントかと思われます。
頭部外傷の既往   頭を大きくケガしたことのある人はリスクが高まると言われています。
  押入れで頭をガーンと打って目がチカチカした、というのは含まれません。
  頭部外傷とは、交通事故などで3メートルくらい飛ばされて、頭から落ちてそのまま昏睡状態。1週間くらい記憶が戻らない
  というような状態です。
消炎鎮痛剤   さまざまな痛み止め、インドメタシン、バファリンなどを常用している人。例えばリューマチ、変形性膝関節症の
  人たちからもアルツハイマー病は出にくいといわれます。
  アミロイドが脳に溜まるのは炎症であり、そのため消炎鎮痛剤を使うと頭の中に入っていって
  アルツハイマーを予防するように働いてくれるという説もあります。
  消炎鎮痛剤は胃の壁面を荒らすものが多いのですが、最近では荒れないものも出てきました。
  それを使って、アメリカ・ヨーロッパではアルツハイマー病の家族歴が多い人に予防をしようという動きも出てきました。
昼寝  ポイントは30分くらいの昼寝です。1時間以上だとかえってアルツハイマー病を促進しかねません。
 睡眠と加齢を考えた時に、世界中のどこの研究者も言うのは、年齢と共に睡眠効率が悪くなるということです。
 睡眠効率とは、布団に入っている時間のうち本当に眠っている時間の割合のことです。
 若い頃は一度も起きなかったのに、年を重ねていくと夜中にトイレに起き出すようになり回数も増えます。
 当然睡眠は足りなくなり、昼間にテレビを見ながらうつらうつらする。体が睡眠を補おうとしているのです。
 ですから短時間の昼寝をします。
 1時間半眠っても15分眠ってもスッキリする感じは同じです。
 短時間の睡眠は意志の力を必要とします。
 長時間の睡眠は夜の睡眠をさらに狂わせるのでよくありません。  

    ストレスがあると、ネズミでは脳の神経細胞の再生率が落ちます。
 ストレスで神経細胞が新しく出てくるのを抑えてしまいます。
 良質の睡眠をとってストレスを少なくしている状態は、少なくとも悪くは働かないと思います。

リハビリ
  動かなくなった手を動かせるように訓練するのと同じように、アルツハイマー病や交通障害、脳卒中などで
  悪くなってしまった脳の働き、認知機能をよくしようという風なリハビリも盛んです。
  脳の血の流れを見たり、活性がどこで行われるかを光りで見る方法が発達してきました。
  なぜリハビリをすると一旦言葉を失った人がまたしゃべれるようになるのかが分かってきました。
  代償といい、本来は言葉の機能にぜんぜん関連していない部分がトレーニングにより肩代わりをしてくれる
  ようになります。

  リハビリで頭を鍛えようとする時、頭そのものを鍛えようとしてはダメだと思います。
  回想法や記憶術などの方法がありますが、記憶が悪い人にそれをやっても嫌がられます。
  むしろ音楽とか絵画とか、ちょっと使わないものを使って失われたものを何とか補うというのがいいのでは、と
  2、3年前から取り組んでいます。

  なぜ音楽がいいかの根拠です。   例えば音楽家は脳の左の側頭平面が大きい。
  側頭平面は言葉を理解する中枢と一致します。
  皆さんお聞きになったことがあると思いますが、我々は言語を左側の脳で処理し、音楽は右側の脳で聞く、と。
  ところが、プロの音楽家は音楽も左の脳で処理します。
  左脳は論理的、右脳は感覚的と言われますが、我々にとってはそうであっても音楽家になると音のひとつひとつに
  対して非常に批判的になります。ですから感性ではなく論理で処理されるようです。
  そのために音楽家は左脳が音楽分だけ大きくなるという風に言われています。
  音楽家の左側頭平面に関係ある言語性の記憶テストをすると、やはりよろしいという報告も出ています。

  モーツァルト効果というものもあります。
  モーツァルト作曲の、あるピアノソナタを聞くと頭がよくなります。
  曲を聞いた直後の知能テストは、点数が上がります。
  アメリカで真偽の結果が2、3年前に出されました。知能のある一部分だけが本当によくなりますが、
  1時間しか続きません。
  直接的に何かに役立つわけではありませんが、何らかのヒントになるかもしれないということです。

  国立精神神経センター内で、アルツハイマーのごく初期の方を対象に音楽でリハビリを行いました。
  音楽には素人の方々ですので、打楽器なら適当に叩き、弦楽器も適当にかきならす。
  そこへ中心になっている女性がピアノやエレクトーンで音を入れると、適当な音が吸収されてハーモニーになり
  なにやらスゴイことをやっているように感じます。
  すると面白さを感じて、適当に叩いていたものにも工夫が出てくる。面白いと思ってやると
  学習能力は高まります。
  やり方ひとつですが、音楽でもって記憶がよくなります。

  アートセラピー
  御茶ノ水にある芸術造形研究所の金子先生がなさっているものです。
  我々は、太陽や富士山を描くように言われると、だいたいこのようなものを描きます。

  実は写生をしろ、と言われても下手な人ほど自分の概念で描いている。つまり観察が足りない。
  既成概念でなく、従来使ったことがない頭を使う。

  ユリのネガポジ画
  黒い紙の上にユリがひっくり返して置いてあります。
  (画像)   ふつうに「描きなさい」と言われた場合
  (画像)   金子先生は「この花びらと黒い紙の境界を見て下さいね」と言います。
  境界線を見ながら、ユリ以外の部分を描いていきなさいということです。
  黒い紙を写しとっていくことで、はじめて細かいくぼみや割れ目に気がつきます。

  ペンキを塗るような太い筆でユリを描く
  細い筆であれば、縁取って中を白く塗って出来あがりにしてしまう。
  それを絶対にさせない、とペンキ用の刷毛を持たせる。刷毛だと細かい部分が描けないので、
  一筆で勢いよく描かせる。
  すると皆、失敗してはいけないと気合が入り、一枚一枚の花びらをよく見るようになります。

   先生は200ものテクニックを持っています。

まとめ
世に言われる予防法(指先を使う、俳句をひねる、茶飲み友達をつくる)は、根拠がありません。
アルツハイマー病の最大の危険因子は、年をとること。
また遺伝的な背景。
性別(女性は男性の1.5倍なりやすい)
これらはどうしようもありません

そこで
長年勉強すること。
神経細胞は増えませんがシナプスが増えることによって、細胞同士の連絡がよくなります。
ですから生涯を通じていろいろ勉強しましょう。

豊かな環境
単調な生活をしているよりも、どんどん前へ出て行くライフスタイルは恐らく人間にとって
神経細胞を増やすと思います。(ネズミの実験では証明されています)

睡眠
30分程度のお昼寝。

有酸素運動
有酸素運度は頭の前頭前野を鍛えます。
何かを思い出す時に、引き金を引く役割がある部分と考えられていて、ここを鍛えることで思い出し力が
強まるのではないかと考えられています。
ちょっと息が切れる程度の早歩きは有酸素運動になります。ただし、心臓や呼吸器が悪い方もおられるでしょうから、
ご自分の先生に相談しながらやるようにしましょう。

栄養
魚をたくさん食べるといいと昔から言われています。
特に青魚は脳血管性痴ほうにいいと言われています。最近ではアルツハイマー病にも魚のDHAがいいと言われています。

音楽や造形など、論理でないほうの頭の使い方も効果があると思われます。

 不眠で飲むお薬は何か影響がありますか?

 今までの研究では、アルツハイマー病に関して睡眠薬そのものに原因があったり引き金になったりすることはないと言われています。   ただ睡眠薬は、一度飲み始めると止められなくなるものがあります。(飲まないと全く眠れないようなリバウンドが出たりする場合)   睡眠薬は筋肉を弛緩させますから、夜中にトイレに立ったりする時に転倒しやすい。気をつけたほうがいいと思います。

 脳の萎縮は加齢とともに進むとのことですが、MRAなどで脳の状態をチェックすることでアルツハイマー病を診断することが できますか?

 脳の萎縮をもって病気とするのは適切な指標ではないと思います。 加齢と共に萎縮し、血流が落ちていく場所は前頭葉です。海馬は加齢とともに血流が落ちていく場所ではないようです。 そういう意味では、前頭葉の萎縮はエイジングであると言われると思います。

生理的な脳の萎縮は人それぞれ、バリエーションがあります。
例えば長年に渡ってお酒を飲まれてきた人は、大抵の人が前頭葉が痩せてきます。
頭頂葉も個人差が大きいところです。
海馬は痩せていて他はぴっちり詰まっていても、アルツハイマーが進んでいる人がいます。
海馬などピンポイントで大事な部分は痩せてはいけませんが、全体的な脳の萎縮の度合いと病的なものわすれはほとんど関係が ないと、最近私は思っています。

 ものわすれ外来には、どのようになったら行った方がいいのでしょうか?

 現在『ものわすれ外来』は全国で一千くらいあるのでそうです。大学病院の3分の2は診療科を持っているそうです。
ところが玉石混合で、さまざまです。いずれにしても自覚と客観評価。
客観評価は配偶者がいちばん当てになります。配偶者に見てもらうべきだと言われたら、確かに悪いことが多いと思います。
自分では心配だけれど配偶者に、もともとこんなもんだ、と言われれば安心していいのではないでしょうか。
私も結局迷う時は、配偶者の方の意見を参考にします。
最後の微妙なところは検査やテストではなく、日常的に一緒に居て、日ごろの行動を詳細に見ている人の評価が一番だと 思います。

今、ものわすれ外来に行くことの意義ですが。
今、行ってみて不幸にしてアルツハイマー病の始まりであることが分かり、そこで治療を受けることが何もしないよりも メリットがあるのか、と言われたら、正直に言って今の段階ではさほどメリットがあるとは思えません。
ただ、この1、2年はすごい勢いでいろいろなことが変わってきています。世界中どこの国でもアルツハイマー研究の費用を まわしています。やはりお金が流れるほうの研究が進みます。まさに日進月歩です。
ですから今から手を上げておけば、新しい治療(ワクチン、セクレターゼ、再生医療など)の恩恵が受けられる可能性が 高くなるので、直結の利益はなくても数年先を考えておけばメリットはあると思います。