2002年9月28日

からだの”水”を考える vol.1 
「『ち』を考える」

池田医院 院長
池田 幸市先生




人間のからだの6割〜7割はお水です。
血液は体重の1割くらいです。(体重50kgなら5リットル。体重60kgなら6リットル)

血液の成分
血球成分白血球・赤血球・血小板
3種類の血球は全てひとつの細胞から生まれました。(幹細胞)

血液幹細胞 → 白血球
        赤血球
        血小板

血液幹細胞が最も多く含まれているのが、さいたい血(赤ん坊のへその緒の血)です。
血球成分は骨髄で作られています。
血漿成分フェブリノーゲン
血清成分血液から血球成分と血漿成分を除いたもの。
主な成分はアルブミン(たんぱく質)。からだに不必要な老廃物(最終的にはお小水として外に出る成分)も含まれています。

採血をして固まらせると黄色い上澄み部分ができます。それが血清成分です。
糖もここに含まれていて、血糖が高い・低いというのは、血清の中の糖の量が多い・少ないを言っています。


血液の役割

白血球 外からばい菌が進入してきた時に攻撃をし、ばい菌を自分の体の中に取り込んで殺します。(どん食)
どん食をすると白血球自身も死んでしまいます。その死骸が「膿」です。
一度ばい菌が入ってくると、そのデータを記憶する働きを持ちます。(免疫作用)
再度同じばい菌が入ってくると「抗体」を作ってばい菌をやっつけます。
感染症に対して有益な作用をしています。
赤血球 酸素の運搬隊。
血液中の赤血球が肺で酸素を採り入れ、体中をめぐって酸素の必要なところで放出します。
血小板 血液の凝固作用。
血小板だけで血液を固まらせるわけではありませんが、鍵となるのが血小板です。   
血漿 血液の凝固作用。   
血清 アルブミンの主な作用は浸透圧を保つ働きです。

浸透圧とは?
例えば、たらいの中に水を入れて、そこに食塩水を入れた筒を立てます。筒の先はパラフィンのような膜で覆います。
するとたらいの水が筒の中に入り始め、水と食塩水の濃度が同じになる時点で止まります。これが浸透圧です。
人間でいえば、むくみが浸透圧と関係しています。血中のアルブミンが少なくなると浸透圧が下がり、血液中の水分が外に
出ます。血液外の水分が増えることでむくみが発生します。  

病気
上記の血液成分それぞれの役割がきちんといかなくなると、病気になります。
病気には
血球成分の異常によって起こるもの
その他
に分けられます。

血球成分の異常は、血球が多くなるか少なくなるかのどちらかです。
多い少ない
白血球白血病 ほとんどありません
赤血球ほとんどありません貧血
血小板ほとんどありません貧血小板減少紫斑病

白血病
白血球の数が増える病気です。ただし単に数が増えるのではなくて、異常な白血球が増えます。
血液のガン(厳密に言うと違うのですが)のようなものです。
異常な白血球は本来の役割を果たしません。
骨髄の機能が損なわれてしまうことで異常な白血球がたくさん作られ、わずかに残った余力で赤血球・血小板・正常な白血球を 作ることになり、全体として正常な血球の役割ができなくなる病気です。

貧血
正常な赤血球と
比べた大きさ
血色素の量
【1】小さい少ない
【2】同じ正常
【3】大きい正常

※血色素・・・赤血球の中の色素。この血色素の部分で酸素とくっついて、酸素を運搬する。

1ミリリットル中の血球の数
白血球(5000〜8000個) 赤血球(500万個) 血小板(20〜30万個)

白血球は血管内に均一に分布していません。
白血球は血液中のものと、血管の壁にくっついているもの(マージナルプール)が同じくらいづつあります。
壁にくっついているものは数えられないので血液内のものだけを数えたのが、上記の数字です。
例えば体の中にばい菌が入って扁桃腺が腫れ高熱が出ると、マージナルプールの白血球が壁から離れて血液中に入り
病巣へ向かいます。血液中の白血球が増えたかのよう見えますが、全体量としてはさほど変わりはありません。

【1】鉄欠乏性貧血
血液中の血色素が少なくなってしまう状態です。
血色素の主成分は「鉄」。
この鉄分が不足した状態が鉄欠乏性貧血です。
血液製造工場である骨髄の働きは正常でも、材料の鉄が足りない。血液は1日に120分の1が新しく作られています。
120日で全く新しい血液になります。
毎日材料がきちんと補給されていれば問題ありませんが、なんらかの原因で材料がこなくなると毎日毎日少しずつ
血液を造る量が減ってしまい、最終的には鉄欠乏性貧血になってしまいます。

原因
男性の場合:鉄欠乏性貧血の裏に何か重大な病気が隠されている可能性があります。
材料の鉄は閉鎖回路といって古くなった血液を再利用しています。外にはほとんど出しません。
したがって材料不足になることは、普通はありえない。
不足しているのであれば、出血しているということであり、消化管や消化器からの出血が疑われます。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、大腸ガン、胃癌などが疑われます。
女性の場合:閉経前の女性は生理による鉄欠乏性貧血がほとんどです。
閉経後の女性の場合は男性と同じように考える必要があります。

【2】再生不良貧血
骨髄、血液を作っている工場の異常で起こる病気です。3種類の血球全てを作る能力が同時に落ちてしまいます。
つまり貧血も起こりますが、白血球も血小板も少なくなってしまうことで他にも問題が出てきます。

【3】悪性貧血
ビタミンB12とヨウ酸が不足して起こる貧血です。
これは何か前提となる病気があって、その結果ビタミンB12とヨウ酸が足りなくなり、貧血になります。
普通に食事をしていれば足りるビタミンB12とヨウ酸。不足するのは、病気で胃や消化管を切除してしまった場合です。
食べた時に胃袋が少ないと吸収できないのです。すぐに貧血になるわけではなく、胃の切除から5年、10年経って表れてきます。
医師は血液検査で貧血の状態を調べ、貧血になっていれば注射でビタミンB12とヨウ酸を補います。
名前は「悪性」ですが、実際には悪性ではありません。

赤血球の病気になると酸素不足の症状になります。
主なものは、普通に歩いていても動悸がする、息切れがする、階段の上り下りが非常につらい、といったものです。

治療の際の注意》
鉄欠乏性貧血の場合:不足した鉄分を補給することで貧血は改善します。
が! 貧血が改善してすぐに治療を止めてしまうと、すぐに再発します。
鉄は貯蔵庫(肝臓や脾臓)に蓄えられます。鉄欠乏性貧血が起こった時には貯蔵庫はからっぽです。
治療で補給された鉄分は、まず赤血球を作るために使われ、貯蔵にはまわりません。
貧血は改善しても貯蔵庫はまだ空のまま。
ですから、ある程度の蓄えができるまでは治療を続けましょう。
個人差はありますが、治療に少し時間がかかるものと考えておきましょう。

血小板減少性紫斑病
血小板を作る場所に問題が起こって血小板が減少してしまう病気です。
血液の凝固作用がある血小板が少なくなってしまうことで、自分ではぶつけたつもりがないのに大きなあざができていたりします。
また、今まではなかったことなのに歯磨きで歯茎から血が出るようになった、鼻血が出やすい・なかなか止まらないなどの症状もあります。

鉄分の摂取量
赤血球の材料(=鉄)は、どのくらい食べていればよいのでしょうか?
必要とする量は、その人の状態によって異なります。
簡単に覚えるなら以下の数字になります。
10mg/日 ・・・ 男性・閉経後の女性
20mg/日 ・・・ 閉経前の女性
30mg/日 ・・・ 妊婦

女性は男性の倍の鉄分を摂取しなければならないため、どうしても女性の方が貧血になりやすいです。

現実問題として、1日に30mgの鉄分を食事から摂ることは不可能です。
手っ取り早く摂るには造血剤(鉄剤)を飲むことになります。

<付録>
練馬区報(9月11日版)
40歳・50歳・60歳の節目検診を受けられた方々の血液検査結果から。

特に注目して欲しいのがコレステロール。
高コレステロールを指摘されている人が、40歳では38%、50歳では45%、60歳では57%もいます。

高コレステロールは自覚症状がなく、血液を調べてはじめてわかります。
高コレステロール血症になると血管が徐々に狭くなり、最終的には詰まってしまいます。(動脈硬化)
血管が詰まってしまったら、もう遅いのです。自覚症状のない病気ほど怖いものはありません。
高コレステロール血症といわれたら、できるだけ治療を受けて欲しいです。

特に痩せている人の高コレステロール血症はすぐに治療をしたほうがよろしいです。
なぜなら、生活習慣病と書いてありますが、痩せている人の場合には生活習慣(食事)に問題があるというよりも、
遺伝であることが多いからです。まだ分かっていない部分ではありますが、子どもの頃には症状がなくても遺伝として生まれ持っている
ものが年齢とともに顔を出すのだと考えられています。
一方、肥満タイプの方の場合は生活習慣上の問題点を改善する努力をしましょう。食生活を改善してもコレステロール値がある一定レベル以上
高ければ、そこではじめてコレステロール値を下げるような薬を飲むべきです。

 血液サラサラがいい、と言われていますが・・・。

  サラサラ過ぎてもいけないんですよ。 つまり赤血球・白血球・血小板の数がきちんと合って、それらが正常な働きをしていればいいわけです。 サラサラ・・・というのは高コレステロール血症とのかかわりでおっしゃっていると思います。血液が濃くなっていたり、 血管が狭くなっていると血が固まりやすい。 脳卒中は明け方の、いちばん血液が濃くなっている時間帯に多く起こります。朝、起きたら水を飲みなさいというのは 濃くなった血液を正常に戻すためです。 納豆は納豆菌の働きで血液が固まるのをある程度防ぎます。心筋梗塞をやった後で、血液を固まりにくくする薬を飲んでいる人は あえて納豆は食べる必要はありません。普段何の問題も無く、健康でいたい人は納豆を食べるのはよいと思います。

 献血で血小板のみを採るものがありますが、なぜですか?

  先程、病気のところでお話しましたが、赤血球だけを必要としている病気の人や血小板だけを必要としている病気の人が います。赤血球だけを必要としている人に不必要な血小板まで輸血する必要はありません。昔はそういう方法がなかったので 全血輸血といって、不必要なものも輸血していました。今は血液を分離する方法がありますので、必要なものを必要な分だけ輸血します。