病気にならないためのリハビリ

2001年12月8日

高野台松本クリニック
院長 松本 不二生先生




じぶんが生き生きとできること、生活にはりをもてることは、みんなリハビリです。
からだをじょうずにつかうと、生活が楽しくなります。

からだを上手に使うことは「美しい」こと。みんなで美しくなりましょう!

リハビリという言葉・リハビリの心
リハビリは英語です。
中国語では「復興医学」と書きます。
「元に戻して興す」。本来の意味は、どんなことであれその人が元気になるのに役立つこと全部です。
例えば、元気のない人に声をかけてなぐさめてあげる。お話を聞いてあげる。近所で困っている人が いたら、買い物を伝だってあげる。
リハビリの心とはそういうものです。


からだを上手に使うことができないと、どんなことが起こるかな?

頭痛…脳外科の領域と考えられがちですが、頭痛の患者さんの9割くらいは首の骨や関節の故障で痛みが 出ているケースです。
    きちんとからだを使うことで随分と改善します。


〜お話編〜

1.じょうずに立つ
ここに1本の棒があります。手のひらに垂直に乗せて倒れないようにするためには?
バランスをとります。
立つことはこれと同じこと。
人間の頭の重さは約7〜8kg。スイカのようなものと考えましょう。
スイカの下に棒を1本。これが首の骨。首の骨は、太さがだいたい自分の手首くらいだと思ってください。
手の平でスイカを支えます。どうやって持ちますか?

こうやって下から支えますよね?

しかし、実際に皆さんがお勝手で洗い物をしている時、針仕事をしている時、またパソコンをしている時は どうなっているでしょう?

こうなっていませんか?
これでは、首が疲れないわけがありません。また、肩がこったり、肩の上のほうが疲れたりします。
ですからいかに楽な格好をするかを覚えれば、いろいろな苦痛がらくになります。


2.じょうずに座る
立っている時間と座っている時間、今の人は座っている時間の方が長いと思います。
座っている時にも楽な格好をするためにはどうしたらいいかな?

3.じょうずに息をする
呼吸とは息をすること。体に酸素を送ることです。
息をするための筋肉は、肺を動かすために筋肉、胸の筋肉(大胸筋)、わき腹・背中・お腹の筋肉。骨盤も関係があります。
骨盤の形を支えているのは太ももの筋肉。
このように呼吸にヘンなくせがあると、いろいろなところに無駄な筋肉の力がかかります。
「腕がしびれる」「肩がはる」という患者さんは、呼吸をする時に胸が動いていない人がいます。
肩で息をしているんです。でも、それは指摘されないとご本人はわからない。
息をする時にいちばんだいじなのは横隔膜。ここが動くことが大事。でも横隔膜が弱っている人は、 「深呼吸してください」というとお腹がへっこんでしまったりする。
普通は大きく息を吸うとお腹は膨らみます。横隔膜が弱っていて、できない人は息が苦しいので肩で息をする。
すると首の筋肉に疲労がきて、痛むようになる。そこが神経の出口だったりすると、単なる首の筋肉痛でなくて、 腕の神経症になってしまう。だからその人の訴えは「夜になると腕がしびれて仕方ない」となります。
呼吸は整形外科にとって非常に大切です。

4.じょうずに歩く
皆さん実にいろいろな歩き方をなさっています。
歩く時には腰と同時におしり、骨盤も前に振り出します。体は残っているので、上半身と下半身がねじれるように リズムよく動きます。
でも例えば膝が悪かったり、背骨が曲がっていると腰は左右均等にリズムよく曲がる、というわけにはいきません。

腰が左右対象に動く場合対象に動かない場合

左右がじょうずに動かないと、疲れる筋肉、使っていない筋肉が出てきます。
いつも伸ばされている筋肉、いつも縮まっている筋肉です。疲れがたまってきたり、いつもと違うこと(バス旅行などで長時間 バスに乗っていたり)をすると無理が出て、痛くなります。


5.じょうずに運動する
嫌々やっちゃ駄目です。楽しんでやれないと続きません。
『運動』=スポーツクラブではありません。日本舞踊、エアロビクス、ジャズダンス、ハワイアン…要は自分が楽しければいい。
散歩もちゃんとやれば全身運動です。

〜実習編〜

1.じょうずに立つ
膝は軽く曲がったくらいの状態で。
肩の力を抜きます。
腕のひじのくぼみは、真正面よりやや内向き加減。
(内側に向いている人は胸の筋肉が縮まっている人。外側に向いている人は肩甲骨が 内側に寄ってしまっている人)
てのひらは内向きに。
足の裏に気持ちを集中。重心は真中に。
(つま先側に重心が寄っている人に、ふくらはぎ・アキレス腱の痛みを訴える人が多い)
膝小僧の向きが足の人差し指(親指の次の指)と同じ方向を向くように。
(お尻のまわりに足を外向きにする筋肉と内向きにする筋肉があって、 そのバランスがとれていないと、どちらかに向いてしまう)

この状態で半分腰を沈めます。(膝が痛い人はやめてください)
体に余分な力を入れないように。この時、膝の方向は大丈夫ですか?

2.じょうずに座る
椅子に浅く腰掛ける。
理想的には、椅子の高さは個人個人で変えられたほうがいいですね。
太ももが座面に来て、膝がだいたい直角、足首も直角。これが基本です。(理想です)
背中が猫背になっていませんか?
頭が体の上に乗るように。
これは、若い人を基準にしているのでその人なりのじょうずな座り方でいいです。
「理想でなければ全てじゃない」わけではありません。
顎はあがっていませんか?
顎があがるというのは首の後ろ側の筋肉が縮まっていることが多いです。
膝小僧は足の2番目の指を同じ方向を向いていますか?

さて、立ちあがります。

足を肩幅に開いて。
足は体の下に少し折り込むような感じ。

よくある立ち方。
どっこいしょ、とおしりを突き出して立ちあがる
よくある座り方。
電車などで、隣に振動がくるほど、どしーんっと座る人がいます。
そういう人は、足の筋肉をあまり使っていません。上半身のバネだけを使っています。
しかしこれからお教えするのは、背骨の筋肉、お腹の筋肉、太ももの前側の筋肉、おしりの筋肉、みんな使います。
座る、立つの途中経過で、ある部分だけ使うのと、ここもここもここも使ってみんなでやるのとでは違いが出ます。
手分けしてやったほうが楽です。

立ち方、座り方で自分で気がつかないクセがあるために、頑張っちゃう部分は頑張っちゃう。サボッている部分はサボリってぱなし。
サボッている部分は段々と弱くなります。弱くなり過ぎると痛くなります。
頑張っている部分はがんばり過ぎて、筋肉が固くなります。

ですからいろいろな場所をじょうずに使うことが大事です。
全身をバランスよく使って立ったり座ったりすると、はじめはキツク感じると思います。(日頃使っていないからです)

では立ちます。立ったら、先ほどの『じょうずに立つ』です。座ります。座り方は立つ時の巻き戻しだと思ってください。

こういう座り方を習慣づけておけば、特別なトレーニングをしなくても筋肉のバランスがうまくいきます。


3.じょうずに息をする
楽に肩の力を抜いて。
一方の手を胸に、もう一方をお腹に当てましょう。
今日お教えしたい呼吸は、胸もお腹も動きます。
普通に呼吸をする時は、胸はかすかに上下動。追従するようにお腹が動きます。
深呼吸。するとお腹が大きく膨らみます。
肺は空気が入った袋。フワフワのスポンジみたいです。
それが膨らんだりへっこんだりするためには、周りの胸壁と横隔膜の2つが膨らんだりへっこんだりしなければなりません。
胸が広がると肺が広がる。横隔膜が下がると肺が広がる。だから両方が広がらないといい呼吸はできません。

女性は服装がウエストを締めつけているものが、従来から多い。
男性はデスクワークが増えたし、またトラックの運転なども動作だけ見れば、座って手で何かをしている仕事です。
そうすると上半身の筋肉が固くなってくる。

息を吸う時は胸もお腹も動くように。ただし楽に呼吸をする。
まず、息をはきます。呼吸の練習は「はく」ことから始まります。
はい、はいて、はいて…。ずーっとはく。どんどん、はく。お腹の中の腸や胃を風船だと思って、ぺしゃんこになるまで はきつづける。もうはけなくなったら、力を抜きます。自然と新しい空気が胸とお腹に流れ込んできます。

これで横隔膜のストレッチになります。ただし、一種の体操なので練習はほどほどにしてください。


4.じょうずに歩く。
歩く時の理想。エクササイズウォーキング。
歩幅はだいたい身長の35〜40%。(身長150cm…歩幅60cm 身長160cm…歩幅64cm)
歩幅は、つま先かつま先もしくは踵から踵の幅。
相当広い歩幅です。

歩幅が身長の40%というのは、ひとつの目安ですので出来なくていいんです。
ただ、大きい歩幅で歩けば上半身も使う、ふくらはぎの筋肉も伸びる。全身を使って歩くから筋肉が柔らかくなるし、 体をねじって歩くことでストレッチにもなります。


さいごに
どんなに正しい姿勢をしていても疲れます。どんなにいい格好でも、同じ姿勢を続けていれば疲れます。
ですから、からだの動きをちょこまか変えることが大事です。
私はさっきからモゾモゾ動いていますけど、それは疲れたところをその都度らくにする習慣づけをしているからです。

体の疲れた部分を、いかに疲れさせないようにするか。
生活の中に、実はいろんなヒントがあります。自分でできることはいっぱいあります。
どこかがこりやすいとか、腰が痛くなるといったことは、今言ったようにからだの使い方のどこかに負担があるんです。
ご自分でご自分のからだを大切になさってください。


Q&A
「息をはく時は、鼻からですか?」
普通の呼吸(健康な状態で)は鼻呼吸です。呼吸法の練習の時は、吸う時は鼻。はく時は軽く口を開けます。そうすると一層効果的です。

「息をはく練習は、途中で息継ぎをしてもいいのですか?」
息継ぎ、というか休んでも構いません。いろいろ工夫してみてください。息をがんばってはいている時、相当いろんな力が  からだに入っていると思います。それは練習になっています。バーバル上げと同じように、重くてもうーんと頑張ることで  練習になります。これ以上やるとキツイ、というところまでいったらそこで止めてしまっていいんです。

「腹式呼吸のじょうずな練習方法を教えてください」
家に帰ったら、仰向けになって膝をちょっとたてて寝っころがってください。家にあるちょっと固くて重い本を探しましょう。  電話帳だとふにゃふにゃしちゃうので、もうすこししっかりした本。これをお腹の上に縦に乗せます。その状態で本が上がり下がり  するように練習する。これが腹式呼吸です。