2002年10月19日

からだの”水”を考える vol.2 
「『涙』を考える」

高野台眼科医院 院長
船田 みどり先生




ドライアイ自己診断チェック
1目が疲れ易い2目やにが出る3目がゴロゴロする
4重たい感じがする5目が乾いた感じがする6なんとなく目に不快感がある
7目が痛い8涙が出る9ものが霞んで見える
10目がかゆい11光りを見るとまぶしい12目が赤い

ドライアイは、いろいろな症状が出てきます。

なぜ涙は出るの?

刺激性の分泌・・・泣いた時やつらい時に出る涙
基礎分泌 ・・・実際に必要なのはこちら。普段、涙はちょろちょろとずーっと出ていて、眼の前を湿らせて鼻に抜けていきます。

まばたきをする、というのはまばたきによって目を潤さないと目が保たれないからです。
基礎分泌は日中のほうが多く、夜寝ているときは少なくなります。
日中の涙の量は約8〜11CC。(血液検査で採血する血量がだいたい7〜8CC)

涙は眼窩にある涙腺という腺組織で作られています。
(簡単に触れることが出来る腺組織=顎下腺、耳下腺)

涙腺で作られた涙は、まぶたの裏側の排出管からちょろちょろ流れてきてまばたきをするたびに目の前を覆い、
鼻寄りの上下に開いた小さな穴(涙点) から、まばたきのたびに涙小管を通って鼻のほうに行きます。
普段は何も感じませんが、泣いた時に出る鼻水は目から流れこんだ涙です。

涙の成分(血液と比較して)
血漿
グルコース80〜900〜5
たんぱく質6.70.6
コレステロール2008〜32
ナトリウム・カリウム
クエン酸・アスコルビン酸×

血漿と涙の大きな違い 
血液には血漿以外に血球があり、ばい菌を防ぐ働きをしています。
涙には涙の中にライソゾームというものがあり、それが角膜にばい菌がかからないようにという働きをしています。

涙の構造=三層構造
外側:油の層
真中:水の層
内側:ハチミツ(ムチン)層

水が空気と直接触れていると、どんどん蒸発してしまいます。
涙はなぜ角膜を守らなくてはいけないのでしょうか? 
角膜(黒目の部分)には血管がありません。ですから角膜は酸素や栄養を涙の中から ある程度もらう必要があります。
ですから涙は角膜、つまり「見る」ためにはとても大切です。

最近はドライアイが注目され始めたせいか、潜在的な患者人口は600万人とも言われています。
これは糖尿病の患者人口と同じくらい規模です。

ドライアイの症状

ドライアイで涙が少ないことにより、外から花粉が入ってきても洗い流せず、したがって他の人よりもたくさんの花粉を浴びていることに
なってしまう。 アレルギー性結膜炎とドライアイを一緒に持っている人は多いです。

流涙の場合は、涙が少ないために涙に含まれているタンパク質だけが残ってしまい、目の縁にペタペタくっつき白いカスのようなものが
残ってしまう。 ベタベタしてしまうが、実際には涙は少ない。

ドライアイとは? 
涙の量的・質的異常
放っておくと角膜や結膜、目の表面に傷がついてしまいます。

ドライアイの場合の角膜の傷の付き方の特徴は、まぶたに隠れていない下半分に多く傷つくこと。
角膜上皮障害を長い時間放っておくと、傷を治そうとし周囲から血管が入りこもうとしてきます。すると角膜が白く濁ってきてしまいます。

ドライアイの検査
細微灯顕微鏡 眼科に行くと「顎を乗せておでこをくっつけて」と言われる機械
普通に見てもよくわからないものが、拡大していくと見えるだろう、というもの。
角膜・結膜・マイボーム腺などを観察し、患者さんの訴えの原因を探す
涙液検査 普通の人は目を開けると下の部分に涙が溜まっています。左右の目を見比べて、量の多い・少ないをチェックします。
涙液破壊時間
(BUT/ブレイクアップタイム)
まばたきをする時間です。目が乾いてくるので思わず目を閉じてしまう時間がBUTです。
5秒以下だとドライアイの陽性になります。
シルマーテスト濾紙を目の端に挟んで、5分間でどれだけ涙が出るかという検査です。
綿糸法シルマーテストの濾紙が大きいので、糸で同じようにテストしたもの。
クリアランステスト目に色素を入れて、その色素が少なくなるのにどれだけの時間がかかるかをみるもの。

厚生省が定めているドライアイの診断基準
【1】シルマーテストで5ミリ以下、綿糸法にて10ミリ以下、涙液破壊時間が5秒以下、いずれかを満たすものを陽性とします。
【2】角結膜上皮障害は、フローレッセンで1点以上、ローズベンガルで3点以上、いずれかを満たすものを陽性とします。

【1】および【2】両方ともあればドライアイの確定。【1】または【2】だけのものは疑い。
気になる人は来ていただくとこういう検査をして、本当のドライアイなのか、見かけ上のドライアイなのか、ドライアイ傾向にあるのかがわかります。

ドライアイの原因
シンプルドライアイ免疫学的異常を伴わない。涙液層の異常。主涙腺からの分泌が少ない。
涙液分泌を低下させる薬があります。 例)風邪薬で鼻水を止める作用のもの。これは副交感神経を遮断するので、涙もだ液も止まります。
  薬の副作用として口渇と書かれているもの。これも大抵は目も乾きます。(春先だと花粉症の薬として処方される坑ヒスタミン剤。坑圧剤にも同じような 副作用のあるものがあります)
潜在的な原因コンタクトレンズを使用していることやコンピュータの仕事に従事していること、また目の手術の既往がないかと いうことも考えられます。
局所性の原因
兎眼性角膜炎
顔面神経麻痺などでまぶたを閉じる筋肉の働きが悪くなると、目を閉じることができなくなります。
こういう場合、角膜が常に表面に出てしまうので、乾きます。軟膏を入れて眼帯をして、ひたすら自然に治るのを待ちます。
局所性の原因
マイボーム腺機能不全
まぶたの縁の穴が詰まってしまって、油がうまく流れない状態です。
  洗顔の時に水でよくマッサージをしながら洗ってもらうとか、ひどい人はベビーシャンプーを使って綿棒で洗ってもらったりします。
局所性の原因
眼類天疱瘡
皮膚、粘膜、口の中もただれてしまう病気。
Steavens―Johnson(スティーブンスジョンソン)は、薬によって起こるものです。角膜から全てただれてしまい、病後ドライアイが続きます。
局所性の原因
ビタミンA欠乏症
ビタミンAは杯細胞からムチンが出る時に必要なものだと言われています。
ニンジンや緑色の濃い野菜に入っています。
戦前、戦中は欠乏症のために夜盲症(トリ目)などの問題もありましたが、現代人の場合には極端に偏食の人でないかぎりありえません。
局所性の原因
シェーグレン症候群
ドライアイの症状の出るものとして有名です。涙もだ液も出ず、リューマチなどと合併しています。
厚生省の難病指定で、指定を受けると治療に東京都から補助が出ます。
目薬を1時間ごとにつけないと目が開いていられないというほど強力なドライアイになります。
免疫疾患の症状として、涙腺へのリンパ球の浸潤が起こり涙腺を破壊しようとしてしまいます。自分で自分の体に対する抗体を作ってしまう病気です。

ドライアイの治療法
●涙液の補充(人工涙液)
マイティア(市販品)には防腐剤が入っています。この防腐剤(塩化ベンザルコニウムなど)が目に悪いので、 しょちゅうつける人には生理食塩水を小分けにしてお出ししています。
市販品で防腐剤が入っていないものは、ソフトサンティア。ただし値段が高めになってしまいます。
防腐剤が入っていないものは、1週間から10日経つと、12%くらいは雑菌などが入っています。点眼の際に容器が睫毛などについてしまうためです。
ですから防腐剤の入っていないものは、理想的には1週間くらいで使いきましょう。

アイリス、ノアールリフレッシュ、ティアーズナチュラルフリー(市販品/防腐剤なし)
これらはディスポーザブル容器に入っています。1回分ずつ使いきりで、パキパキ折りとって使う容器です。
眼のためにはいいのですが、料金が高くなってしまうため頻繁に使う人には向いていません。

ヒアレイン(要処方箋)
分子が網の目状になっているために、中に水を蓄えることができます。
生理食塩水、ソフトサンティアの付け心地がサラッとしていてすぐに普通に戻ってしまうのに比べて、ヒアレインはつけてから30分は 潤いを保っていられます。

ティアバランス
最近発売されました。防腐剤(塩化ベンザルコニウム)が使用されていません。他の防腐剤が入っているので、塩化ベンザルコニウムが合わない人には こちらを処方しています。

●ドライアイ保護用眼鏡(モイスチャーエイド)
涙を蒸発させないために使用します。市販はされていません。
花粉症の時のように眼鏡の横が全部覆われていて、ドライアイ用には横に湿った綿を入れられるようになっています。

●室内の日常環境
暖房の季節になると部屋の空気が乾くと同時に、眼も乾きます。患者さんによっては加湿器を入れてもらうこともあります。

●外出時の眼鏡
普通のサングラスでもいいです。自転車に乗ったりして眼に直接風が当たると乾いてしまいます。目のためにはかけたほうがいいです。

●目線
パソコンなどを見るときには、目線より少し下がいいです。

●医療
涙点プラグ お風呂の栓をするように、眼から鼻に涙が抜ける涙点に蓋をしてしまいます。単純だけれども有効な方法です。
簡単にできますが、患者さんが無意識にこすると取れてしまいます。国産のものもありますが、輸入品のほうが形がいいので 使っています。これが1個5000円。保険が効くので3割の方なら1500円、1割の方なら500円を窓口でお支払いいただくことになります。 涙点は上下にあるので、両方ともふさぎます。
免疫抑制剤の全身局所投与 免疫的な異常であるシェ−グレン症候群の場合にはステロイドやある種の抗がん剤を投与することになります。

現段階では、涙腺自体を活発化させる治療法はまだありませんので、ドライアイの人に「一生ドライアイなのか?」と聞かれた場合には 「そうです」と答えるしかありません。

涙が出過ぎる
悲しくもないのに涙っぽくて困る、という人もいます。
機能的な分泌過多
器質的排出閉塞

         
機能的な分泌過多 刺激をするから涙が出ます。一時的に涙が多く出ている場合には、結膜炎、角膜結石、角膜異物、角膜片、翼状片などの可能性があります。
眼がゴロゴロするから洗い流すために一生懸命に涙が出ている状態です。

       アレルギー性の結膜炎だと、まぶたの裏がボコボコになってしまい、それが眼をこすってしまうことが刺激になります。 コンタクトをしているとこういう状態になることが多いです。

角膜にばい菌がとりつくと角膜潰瘍になります。この場合には涙が出る以外に、眼がゴロゴロして赤くなり、まぶしいなどの症状が出ます。
器質的排出閉塞
涙の出口が
詰まってしまう状態。
【1】涙点閉鎖
【2】鼻涙管が詰まる・・・赤ちゃんは生後10日めくらいから涙が出てきます。生まれて半年くらいから片目だけ涙と目やにがひどくて 1ヶ月、2ヶ月治らないという時には先天性鼻涙管閉塞であることがあります。治療は針金を通して貫通させます。
大人の場合には、鼻涙管そのものがなくなってしまっているので涙道再建、新しく作らなければいけません。
涙の管と鼻の骨を削って、涙嚢鼻腔吻合します。また、NSチューブで道を作る方法もあります。 しかしどちらの方法も詰まりやすいのが欠点です。
今は、鼻のほうから内視鏡を使って行う方法が始まっていますが、まだあまり簡単な方法であるとは言えません。

  ドライアイでない人も冬場にはサングラスをかけたほうがいいのでしょうか?

A.  眼科的にいうと、冷たい風自体は角膜に対してかなりの刺激になります。やはり自転車などに乗るときには大きめのサングラスをしていただくのがいいのでは ないかと思います。
最近、白内障、黄斑変性症など加齢によって起きてくる病気には紫外線が関係していますので、そういう意味でもサングラス、めがねなど日中光線をさえぎるために することはいいことです。